香港の民主化運動を理解する入り口にしたい映画「ジョシュア: 大国に抗った少年」
香港の民主化運動については、「たまにニュースで聞くなー」くらい。
そもそも香港についてよくわかっていなかった。
中国の一つの都市くらいの認識。
それこそイギリスから返還されたということも自分は小さすぎて覚えていない。
こんな感じで香港に無関心なぼくでしたが、この映画と出会って気持ちは一変。
Netflixオリジナルのドキュメンタリー映画「Joshua:Teenager vs. Superpower」(邦題 : ジョシュア: 大国に抗った少年)
自分の価値観は何かを問う
まだ高校生だったジョシュア・ウォン(黄之鋒、以下ジョシュア)はなぜ政治的活動を志たのか。
映画の冒頭で「学校の先生は、医者や会計士などになれば成功した人生を送れるという。でも成功とは何かを社会に問う前に、自分の価値観はどうなのかと問いたい。そして社会にとって何が重要かということも。」とジョシュアが語る。
2012年、香港政府は2013年度から「中国人としての誇りと帰属意識を養う」ことを目的とした「道徳・国民教育科」を小・中学校に導入するための推進委員会の設置を検討する。しかし、「道徳・国民教育科」では中国共産党を称賛し欧米の政治体制を批判する教材が採用されている
自分の価値観を問うたとき、ジョシュアはこの中国共産党の「洗脳教育」に反対する活動を行うことを決意する。
もうこの序盤でジョシュアのファンとなった。
果たして自分が高校生のときにここまで考えていただろうか。
ちょうど、政治に少し興味を持ち始めただけで、なにか行動を起こすまでには至っていない。
しかも、日本政府に楯突くのと、中国共産党に異議を唱えるのとはまったく次元の違う話といってもいいかもしれない。
日本では日本の首相をヒトラーに見立てた写真を持ってデモをするなどという、国際社会からしても非常識極まりないことをしても特に身の安全には支障はない。
よほど暴力を振るうなどしない限り、政府に対してどのような表現をしようと許される。
しかし、中国共産党はどうか。
最近だと中国共産党を批判する本を販売していた本屋の関係者5人が失踪したということもあったほど。
こういった環境においても、自分の価値観を大切にし、そして社会にとって重要なことを行う覚悟がすごい。
見事に「道徳・国民教育科」導入を撤回させる
ジョシュアは、上記の「道徳・国民教育科」導入に反対し、「学民思潮」という学生運動組織を率い、デモやハンガーストライキを決行。
その結果、なんと導入の撤回を引き出した。
デモには3万人以上も動員し、香港のトップである行政長官との対話も行った。
このときまだ10代であるというから驚き。
その後、ざっくり言うと中国共産党が勝手に香港の行政長官を選んでしまうという事態が起き、普通選挙を求め民主化運動を展開。
これは「雨傘運動」と呼ばれている。
なぜ雨傘かというと、デモを鎮圧しようとする政府当局が使った催涙弾に対し、雨傘で対抗したからだ。
雨傘運動が起きた直接的なきっかけは、2014年8月31日の中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会による香港行政長官選の改革方針決定だった。候補者は2、3人とし、いずれも指名委の過半数の支持を義務付けるなどした。さらに、6月の「一国二制度白書」でも行政長官は「愛国者」に限ると強調されており、民主派が事実上、排除された。
この雨傘運動には、数万人を動員し香港の中心地を数ヶ月占拠した。
しかしながら、この運動は失敗に終わってしまう。
運動自体は失敗であるが、この運動は世界中のメディアに取り上げられ、香港の状況を世界に知らしめる結果となった。
ジョシュアの現在
ジョシュアは現在、「香港衆志」という政党の事務局長として香港の民主化を目指している。
デモだけではダメで、実際に政治家として参画し世の中を変えようとしているのだろう。
ジョシュア自身は2020年の出馬を目指しているとのこと。
まだ20代前半ということで、これからどうなるのか目が離せない。
Netflixで何気なく観たドキュメンタリー映画だったが、いろいろと考えさせられる内容だった。
「普通」に見える若者が、相当の覚悟を持ち、行動を起こし世の中を変えていく。
その志は、世代や地域を超えて人々の心を動かす。